皆様、こんばんは。
世界国別対抗2017、羽生結弦の「ホプレガ」ご覧になられましたか?
久石譲氏作曲の「ホプレガ」は表現するのがとても難しい曲よね。
彼がこの曲を通じて、どういった表現をして、どのような世界観を作り出そうとしていたのか、興味深い記事をご紹介するわね。
【2017WTTフリー】
羽生結弦が自らのスケート人生を投影した『Hope & Legacy』
杜の都の伝承
七北田川は、北西部にそびえる「泉ケ岳」を水源とする。山中に湧き出す美しい水は、多くの細流と合流しながら蛇行し、西から東へ、やがて仙台湾へと達する。この川にはいくつかの逸話がある。その一つが、七北田川の旧名「神降川(かみふりがわ)」、あるいは「冠川(かむりがわ)」にまつわるものだ。
神降(かみふり)の名は、農業の守り神「志波彦(しわひこ)神」がこの地に降りてきたことに由来する。冠(かむり)については、やはり志波彦神が白馬で川を渡ろうとして石につまずき、頭の冠を川の中に落としてしまったという伝承から来た名前だ。その志波彦神だが、一説によればスサノオであるとか。なかなか神さびた土地である。
泉ケ岳は、四季を通じて様々な表情を見せてくれる。仙台市内の多くの学校が、この山を林間学校に指定しているので、羽生にとっても思い出のある山かもしれない。広大な山林には、ブナの原生林も残されている。これら手つかずの自然も、低地に広がる田畑も飲み水も、すべて泉ケ岳が生み出す豊かな水に支えられているのだ。このことから、泉ケ岳は古来より「水神」を祀る霊山として人々に崇拝されている。
水神……羽生はまさにそんな装いである。
煌めくピアノのアルペジオは、止めどなく溢れ出す湧水を想起させる。羽生はかすかな音を立てながら、滑走を始める。
生まれたばかりの湧水は、岩の隙間を走りぬけ、時おり四方に砕け散る。そのしぶきは、大地や草木に潤いをもたらす命の源だ。
緩やかに流れるストリングスは、巨木をぬって吹く風。目をつむると、そこに二百余年のブナの木が揺れる。
見渡せば、群生する森の花々が、樹間から漏れる陽光に手を伸ばしている。
羽生が光の輪を描く。
森に生まれた七つの泉は、水神の指先が瑠璃色に染めたもの。底をのぞけば、深い碧に遠いむかしの自分が映し出される。
(流れを止めるな、先に進め)
七つの森を超え、小川はいつしか大河になる。そして、長い旅路の果てに大海に流れ込むのだ。
やがて海が雲を作り、風が霧を運び、森に恵みの雨をもたらす時、大地はふたたび地中に命の水を抱く。
何億年も昔から、繰り返し、繰り返し……。
超えるもの
Hope & Legacy(希望と遺産)というコンセプチュアルワードは、作曲家・久石譲氏が長野パラリンピックのフィナーレをプロデュースした際に生まれたものだ。みなで共有するテーマを久石氏が提案したのである。
「障害があっても希望(ホープ)を持って生きること。希望を持てば、必ず乗り越えられること。アスリートとしての姿を見せ、障害者も健常者も共に生きられる世界、その新しい価値観を作り出すことがレガシィ(遺産)になる」
こうして生まれたのが、テーマソング『旅立ちの時~Asian Dream Song~』である。すでに発表されていた曲だが、ドリアン助川氏の作詞で合唱曲に生まれ変わった。
「今地球に生きる者よ、旅立ちの勇気を」
「夢をつかむ者たちよ、君だけの花を咲かせよう」
厳しくも、深い絶対的な愛は、大自然そのものだ。羽生は長野五輪・パラリンピックが開催された1998年にフィギュアスケートを始めたという。青年になった今、この曲に何か運命的なものを感じたのかもしれない。プログラムは、『Asian Dream Song』を挟むように、久石氏の代表曲『View of Silence』がアレンジされている。題名は、久石氏がフィナーレのテーマにした『Hope & Legacy』が踏襲された。
久石氏は著書でこんなことを書いている。ある映画監督からの曲依頼についての話だ。
「映画を作ろう、監督をやろうという人は、想像力にあふれている。自分の持てるすべてを投入して映画を撮っている。こちらもそれに太刀打ちできるだけのもので応えなければならない。監督は、実は自分の要求したイメージの殻を突き破るような新鮮味のある音楽を求めているのだ」
コーチと選手、振付師と選手は、映画監督と音楽家の関係によく似ている。互いにすり合わせ、ぶつかり合いながら、さらなる上を懸命に模索する。“要求したイメージの殻を突き破るような”羽生の進化はつづいてゆく。その中にこそ、「希望と遺産」が生まれるのだ。
※Victoryより一部引用
久石譲氏の曲って、たくさん今までジブリ作品に触れて聴いてきたけれど、
アニメがあってこそ、その曲のイメージが掴みやすかったのよね。
だからどういう世界観を持って表現するんだろうという、先入観がないままこの「ホプレガ」を見たのよ。
生命の力強い息吹を感じるような壮大な曲。
限られた時の中で、生きていく中で、何か困難にぶつかったとしても、そこを乗り越えていくことで、
新しい価値観を見出して、人は向上していける。
演技を通して、彼が示してくれたひとつの「道」のような気がしたのよね。
そこに彼が残した「レガシー(遺産)」がきちんと足跡として残ってゆく。
本当に曲の解釈は難しくて、ひとそれぞれよね~。だから奥が深いし、様々な角度から楽しむことができる。
フィギュアスケートに惹きつけられて、止まない理由はここだわね笑
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
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View Comments
ホープ&レガシーのプラグラムが1番好きです。羽生選手の演技の背景に水と緑が美しく豊かな背景が自然に浮かんできます。
>まる様
まるさん、こんにちは。
久石譲氏の曲はジブリで知りました。
だから曲のイメージが伝わりやすいのですが、ホプレガは全くまっさらな状態から
ユヅの創り出す世界観を感じることができました!
自然の豊かな風景も思い浮かびますよね。
オネエ様こんばんは‼️
2017WTTのホプレガ、見ました~。
ワールドの時もそうでしたが、やはりあのプロは観衆をのみこみます。惹きつけられる、というより圧倒されてしまいました。
ファントムやSEIMEIは、やはりドラマチックな要素があり、感情移入が先になりましたが、ホプレガはスケール観(感)が完全にフィギュアのプログラムの概念を超越してしまっています。
ナイアガラの滝とかフィヨルドのような著名な観光資源を見るのではなく、YUZくんの伸ばした指先やステップが描く弧の中に、何万光年も離れた銀河を感じたのは、ワタシだけではないはず。
シェイリーン振付の巧みさもありますが、やはり見る者の想像を百倍、千倍に膨らませていくYUZくんの「魔法」は、見事としか言い様が無いですね。
これは間違いなく、傑作ですよ。
わずか一季限りのプロとは、かなりもったいない気がします。
あくまで噂の範囲ですが、久石さんはご自身の作品が編曲されるのを好まれておられず、それがためプログラムまで完成させるのは、YUZくんサイドとしてはかなり骨の折れる交渉だったと聞いています。
もしそれが真実ならば、久石氏には、YUZくんの演技をじっくり観ていただきたいですね。特にバラ1などは、9分前後の作品を2分40秒にまで研磨して、3季かけてあの域に達しているのですから。
そりゃ自分の一番思い入れのあるパートを第三者に編集されるのって、余程度量の広い人でなければ無理なんですよね。
でも手塩にかけた作品だからこそ、若いYUZくんに表現の一助として提供してあげて欲しいな、と思うのです。
ま、こんな愚痴言っても完全にワタシの勘違いで、久石氏はとてもお喜びなのかもしれませんが。
あ、オネエ様より、2015WTTでのYUZくんのSPで足が引っ張られているように見えた…という、先日のご指摘ですが。
ワタシは現地で観ていて、はっきりとは気づきませんでした。座席が少し遠めだった事もありますが、この「引っ張られたような」というのは、コンビネーションでの転倒の事でしょうか。
ワタシの目には、YUZくんがスローモーションでコケる感じでした。
「あれま」
って思う間もなく、立ち上がりは速かったように記憶しています。ワタシより少し前に座っていた知人は、リンクが溶けているんじゃない?みたいな事は言っていましたが、どうかなー。会場もリンクサイド近くは暑くもなく、水溜まりっぽいものは見えませんでした。
う~ん、でもワタシからは見えないリンク表面に、どこかの時点で深めに削られたエッジ跡があったのかもしれないですね…。
>フクスケ様
https://victorysportsnews.com/articles/4441/original
こちらに久石譲氏との交渉について、詳細が書かれておりますので、
もしよろしければご参考になさってみてください。
https://youtu.be/OVlaDyTObkI
WTT SPは2:35あたりを見て頂きたいのですが。
削られたところがあったような気がしました。
オネエ様
参考記事有難うございます‼️
この記事はワタシも以前目にしたことがありました。
たぶんこうしたいきさつも頭に入っていた上に、聞きかじりの風評が何らか混濁していたのだとわかりました。
おかげさまで残っていたモヤモヤがスッキリしました。
それから、ご指摘のSPの部分、イーグルのところですが、たしかに現地でも気づきましたよ。その場ではおそらく氷上についた溝にエッジがガリッとひっかかったんじゃないかと思いました。
フツーの観客ならコンビネーションの転倒ばかり気になりますが、さすがにオネエ様、ちゃんと細かいところまでよくご覧になっておられますね‼️
YUZくんのイーグルは惚れ惚れするくらい綺麗なラインをひいているからこそ、こうした微妙な異変もわかってしまう。
(コンパルソリーがあれば、それでも高得点もらえるくらいの選手ですよね!)
思いだしたのですが、これ、減点されていましたっけ?プロトコルまで確認していないのでなんとも言えませんけど、マイナス評価されたならずいぶん理不尽だなぁと、その場では感じました。
>フクスケ様
そうなんです、このイーグルすごく気になりました。
一瞬なのですが、やはり氷に引っ掛かっているなと。
恐らくマイナスはされていないと(すみませんうろ覚えで)思いますが。
真夜中に失礼しますm(_ _)m ずーっと春休みなもんで
杜の都の伝承、素敵な記事をありがとうございます。神様と自然が織りなす世界って昔の人は当たり前のように共存してたんでしょうね…
ホント最初のピアノで動き出すと、キラキラ日の当たる湧き水が目に浮かぶようです。
ホプレガを見たときの水の精のような、森の精のような、ダイナミックで繊細な羽生くんのスケーティングに魅了されましたね。
何度観ても心洗われる、高揚する、今を乗り越える気持ちになれます。
>おばちゃん様
おばちゃんさん、こんにちは!
春休みはいかがお過ごしでしょうか?急に暑くなりましたよね。
このポプレガを見ると涼し気な気分になりませんか?
湧き水の情景が浮かびますよね。そして仰られるとおり、
心が洗われ、さらに先へ進もうという力をくれるプロです。
オネエさま、こんにちは!
昨日、国別対抗観ました!
フリーはもちろんだけど、当時ショートのプリンスも好きだったので、またこうゆうのが観たいな〜と思いました(≧▽≦)
SEIMEIもいいけど、やっぱり新プログラムが観たいです♪
タンゴとかどうかしら?
ネイサンの衣装も「迷走前」でなつかしかったですね(笑)
ハプスブルク調?の宝塚でも見たことあるかんじで、こんな時もあったな〜と(*´∀`)
来季はどんなだろ?
それと、中居くんの番組も観ました!
先にイチローが登場したので、こうなったら1位はゆづしかいないな〜と思って観てましたが、個人的には怪我を乗り越えた平昌オリンピックのがよかったかな〜と(ㆀ˘・з・˘)
でもテーマが、「思い出の名場面」ではなく「大逆転」でしたものね!
ではでは、失礼しました〜。
>まみ様
まみさん、こんにちは!
パプスブルグ家の衣装ですと、わたしは断然ルドルフの青衣装が好きです。
久々にエリザベートが見たくなりました~。
最後に見たのがたまきちとちゃぴの東京公演でしたから。
ユヅの新プロ、来季はきっと見せてくれると思いますよ、期待しましょうね!
お早うございます、オネエ様❗
ホプレガについての記事ありがとうございます。
ウチはBSCS難民なもので、放送はみれないのですが
たまに録画を見てキャイキャイ言ってます❗❗
この年は、SPもFSも笑顔のプロだったので、
なんだか見る度に癒されるように感じておりました。
羽生選手のまわりに、
「もののけ姫」に出てくる木霊が一緒に舞っているように見えてしまって、もうファンタジーの世界❗⬅イタい、、、。
ただ、曲の著作権といいますか、
作曲者の久石氏からしてみれば、まったく違う曲になってしまっているので、いろいろと難しかったのも理解できます。
羽生選手側としてはここのパートでコレをして、
そのためにここはこうしてとなったらそうせざるを得ないけど、やっぱり
作曲者としては譲れないところもあったのではないかと。
でも、その結果こんな素晴らしいプロになったのは
私達からしたら本当に嬉しいことだと思います。
あと、羽生選手のシニア以降のプロって、
ほぼ短調の曲ばかりなんですよね、、、。
パリ散やレックレも、盛り上がるけど短調だし、
ノッテステラータくらいしか長調の曲が思い浮かびませんでした。
何かあったら教えてください❗
すみません、長々と失礼しました。
またお邪魔させていただきますね❤
>猫球様
猫球さん、こんにしは!
長調と短調の違いって、なんとなく明るい曲なのか、そうでない曲なのかで
判別しているところがありましたけど、
使っている音階が「ドレミファソラシド」か「ラシドレミファソラ」なのかで決まるそうですね。
来季のプロがどんな曲でくるのかを楽しみに待ちたいと思います。
そうです、大雑把に言うとそんな感じです❗
ある時、ふと今まで使用した曲を思い浮かべてみたら
ほぼ短調なのに気づいて、
芸術系方面に詳しいオネエ様にも伝えたくなってしまいました。
いらない情報でごめんなさい。
私も来季プロすっごい楽しみにしています❤
>猫球様
いえいえ、こちらこそありがとうございます!
言われてみないと気づかいこともありますし、猫球さんのご助言で、
またより興味深く選曲にも意識してみたくなりました♪